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第1回 「おそ〜い」
第1回 「おそ〜い」
▲子そだて・親そだて
「こうみそだて」の続編です。

 

★「子そだて・親そだて」 By くまこ
「こうみそだて」の続編です。
小学校低学年だったナミも十歳前後の「お年頃」に。そのあたりの子どものあやうさ、親のあたふたを、率直につづっていきます。
タイトルは、「育てる」という意味のほか、「育ってくれ」という願いも込めて付けました。

line
 「もう八時過ぎてるよ!」
 のんびりテレビを見て笑いながら朝ごはんを食べているナミを今日も叱る。
 「あっ…」と言いながらも、次の瞬間には「あはは…」と画面を見て笑っていて、なかなか食べ終わらない。
 「歯磨き、靴下!」
 声を荒げるものの、「わかったよ、もう」とぶつくさ言いながら毎度のことと懲りていない様子のナミである。

 毎朝、なぜこうも「早く!!」を連呼しなければならないのか。子どもに「早く」と言ってはいけない、そういう時は一呼吸ついてから、きちんと諭す…なんてよく言われているけれど、刻々と時間は過ぎていくし、そんなこと言ってたら日が暮れてしまう(マジで)。
歯磨きに行く途中、テーブルに置いてあった新聞の番組欄を見て、「今日、七時からは○○を見よう」と言いながら、意気揚々とこちらに戻ってくる。ここらで母の怒りは頂点に。
「ナミ!! 歯磨きはどうしたのよ!?」「あっ…」。
まったく、もう!! 途中、興味のあることに出会うとそこにひっかかり、当初の目的を忘れてしまう。万事この調子である。
これでホントに小4!? 大丈夫かあ? わが娘!! しまいには、連れ合いと「あんたに似た」「お前にそっくりだ」とDNAの責任をなすりつけあい、醜い争いに発展する情けないわが家であった(「こうみそだて」のころから進歩なし<苦笑>)。

 そんなある日、たまたま不登校の子どもたちの受け皿となっているフリースペースを続けているOさんに話を聞く機会があった。
「子どもたちはかつてないほど過酷な状況に置かれている」
「家でも学校でも気を遣っている」
「いそがしくて考える時間がない」
「学校に行きたくないと思っても、親が心配するからとがんばって通っている子が多い」…不登校の子どもたちを多く見てきたOさんの話には説得力があり、今の子どもたちのしんどさが伝わってきて、「もしかしたら、ナミもそれなりにがんばっているのかな…」なんて、急にナミがいとおしく、悪かったなあと思い、反省した母であった。

 翌朝、めずらしく「早く」を言わない母に、ちょっと戸惑っているナミ。
そうよ、ガミガミ言ったからよくなかったんだ、何も言わなければ、本人は責任をもってきちんとするだろう…。
しかーし!! 甘かった。
ナミは「何も言わなければきちんとする」タイプの子ではなかった。チャイム10分前になってもいっこうに慌てずマイペースの娘にしびれをきらし、ついに「何時だと思ってるの!!」といつも以上に大爆発した母であった。

 どういう子どもなのかをよく知ることが大事だし基本だけど、これって親が一番難しいかも。
遅刻しても本人の責任、とも腹を決められない情けない私…。三日坊主にもならなかった「早く、と言わない」。
「親そだて」はまだまだと実感する母であった。
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