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こうみそだて その11 「はじめてのお泊り」
こうみそだて その11 「はじめてのお泊り」
▲こうみそだて


 
 なにしろ産まれてからこのかた、一日たりとも離れて暮らしたことはないわが子とのはじめての別れ(←大げさ)。近頃では、「お泊り保育」と称して、多くの幼稚園・保育園で園児だけで一泊する体験があるらしい。わが子の通う保育園でも、4歳児、5歳児と「お泊り」がある。通いなれた保育園といえども、一泊するとなると心配でたまらない(←毎度心配性)。

 とくに心配なのは夜。アトピーっ子のわが子は、布団に入って体が温まると無性に痒がる。いつも「なでなでして〜」と連発し、痒いところをなでてやらないと寝付けないのだ。寝るときは引っかき傷を作らないように、綿のミトン手袋をつけるのが日課になっている。たまにスーッと寝てくれたときなど、私が「昨日はあまり痒がってなかったねー」と連れ合いに言うと、「そんなことないよ。夜中に痒がって、ずっとさすっていたんだよ。大口開けてガーガーいびきかいて寝てた人は気付かなかっただろうけど!!」と言われてしまう始末、ちくしょう!!と思うとともに、「やっぱり痒がってるんだぁ」と不安になる私であった。

 お泊りの朝、私は娘に向かって、「今日は、夜痒くても、パパもママもなでてあげられないんだよ…」とやさしく諭す。隣で聞いていた連れ合いが、「ママは寝てるけどね」と茶々を入れたが気にせずに、「とにかく、かゆくなったら、自分でなでなでするんだよ」と言いながら、愛用のミトン手袋を渡した。すると、娘は「手袋はいらない」と言うのである。たぶん、みんなの前で自分だけ手袋をして寝るのが恥ずかしいのだろう。傷になって血が出たらいやでしょう、と言っても「いやだ」と譲らない。そこで、しかたなく「わかった。じゃあ、今夜はかゆくてもなるべくかかないようにね」と言い聞かせた。
 朝、いつものように保育園につくと、なんとなく別れが名残惜しい。このまま明日の朝まで会えないのかぁと思うとなんとなく寂しい。反面、夕方から夜が自由に使えるのも数年ぶりで、ちょっとわくわくする感じだ。たまった仕事をかたずけてもいいし、好きなビデオを見てもいい……。

 午後になって一息入れていると、つけたテレビから流れてくるニュースに釘付けになった。大阪の小学校で、数名の児童が男に切りつけられ、亡くなった子どももいるというのだ。再び不安になってきた。「変な人」が保育園に侵入して、似たような事件が起こらないとも限らない。テレビ画面にはおびえた子どもを抱えるようにした保護者が映し出されていた。もしかして、お泊りは中止? しかし、夕方になってもそんな連絡はない。その日は連れ合いも帰宅が遅く、私は一人家の中でよからぬ想像にかき乱され、何も手につかず悶々としながら床につき、仕事もできず、ビデオも観れずに一夜が明けてしまった。私が寝たあとに帰宅したらしい連れ合いを起こし、事件のことを言うと「大丈夫でしょ…」と寝ぼけ眼だ。変なところに大胆なヤツだ。

 朝食もそこそこに、迎えの時間より少し早めに家を出る。ひしと抱き合い、涙の再会!…との予想に反し、出てきた娘はケロッとした様子。アトピーのところを見てもひどくなっておらず、先生も「興奮して疲れたのかよく寝てましたよ」とのこと。ちなみに、昨日の事件のため、園側が警察に連絡して、夜中保育園の周りを巡回してもらったそうだ。安堵で私はハラハラ〜と崩れ落ちてしまうところであった。
 帰り道、娘は、銭湯にみんなで入っておもしろかったこと、夕食の後に映画(スライド)を見たこと、朝早く起きてラジオ体操をしたことなど、楽しそうに報告している。「夜、ひとりでなでなでしたよ…」とも言い、少し自慢げだ。帰ると、一人で荷物の中から汚れ物を出したりして洗濯機に入れている。すっかりたくましくなった感じだ。

 その夜、「もう手袋はいらない」と娘は言った。四年間毎晩していた手袋は、この日を境にしなくなった。たった一泊のお泊りが、こんなに子どもを成長させるなんて。というか、こんなに一人でいろんなことができるようになっていたなんて。
「おかあさまはおとなで大きいけれど、おかあさまのおこころはちいさい。だって、おかあさまはいいました。ちいさいわたしでいっぱいだって。わたしは子どもでちいさいけれど、ちいさいわたしのこころは大きい。だって、大きいおかあさまで、まだいっぱいにならないで、いろんなことをおもうから」という金子みすずの「こころ」という詩を思い出した。ちょっとさみしく、うれしい母のこころであった。(つづく)
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